夏期になるとカザフの人々は、「ウイ」と呼ばれる移動式住居を組み立てて生活します。モンゴルの「ゲル」をご存知の方は多いかもしれませんが、カザフの「ウイ」はぱっと見た感じでは非常にゲルによく似ています。ただ、中に入ると、その構造が異なることがよくわかります。(当HP内の”カザフの住居”もあわせてご覧下さい。)
 
 
カザフのウイはモンゴルのゲルに比べて大きく内部が広いです。その理由のひとつには、「壁」となるジャバラ式の木製の枠組みの枚数がカザフウイの方が多いためであることが挙げられます。
 
 
さて、そんなカザフウイですが、その「壁」となる木製の枠組みと、外壁となるフェルト(および覆い)との間に、葦を編んだ筵(むしろ)のようなものを挟んで全体を囲みます。
 
 
問題はその筵ですが、勿論、日本のようになんでもかんでも出来上がったものを買うということはありません。そうです、自分で葦を編んで作ります。
 
 
この筵、実は2種類あります。
 
 
葦一本一本に色のついた毛糸を巻いて文様を浮かび上がらせた筵のことを、「オラガンチー」といいます。「オラ ora-」とは、カザフ語の「巻く、巻き付ける」という意味の動詞であり、「チー」は葦のことを指します。つまり、糸を巻いた葦という意味になりますね。
 
 
もうひとつは、色付きの毛糸を巻き付けずに、シンプルに葦だけを編んだ筵です。これを、「アクチー」と呼びます。「アク ak」はカザフ語の「白」という意味の名詞であり、白は、「色が無い」ものに対して使われます。
 
 
ラッキーなことに、今回のサグサイ村滞在中に、どちらも作成している様子をみることができました!
 
 
今回は、アクチーの作成方法について、簡単にご紹介したいと思います。
 
 
アクチーを作る為に何を準備したらいいのでしょうか?
 
 
①2種類の毛糸(羊毛糸と駱駝毛糸)
②普通の糸(白)
③葦
④アクチーを編む土台となる木材
⑤ごつごつした石(最低22個)
 
 
こんなもんです。
 
 
って、こんなもんって書きましたけど、まず第一の「毛糸」半端無く面倒くさいです。
実際、アクチーを編み始める前段階での準備に何日もかかっています。
 
 
羊の毛を用意し、その毛を少しずつひっぱりながらほぐし、ウルチク(urshik)と呼ばれる糸巻きに少しずつ巻き付けながら「糸」にしていきます。
 
 
姉さん、マナイ家にお茶のみにきたときも、糸巻き持参で登場。オドロキデス。
 
 
駱駝の毛も同様にくるくる巻いて糸を作り、毛玉が10個用意できたら、さぁいよいよ編む作業にうつります。
おっと、編む前に、葦の周りについている余分な部分を、せっせせっせとむきます。
 
 
 
 
こんなにむいたんですー。でも、これでも全然半分にも満たなかったんですー。
手が痛くなりました。ホントたいへんだった。。。
 
 
さて、葦も準備できたら、いよいよ編みます。まずは、羊と駱駝の毛糸を一緒にだいたい6〜7mくらい引き延ばします。手のひらいっぱいの大きさのをペアで用意し、それぞれに毛糸をまきつけ、天秤みたいなセットをつくります。
  
 
こんな感じ。
 
 


 
石の準備と平行して、葦の準備もします。
最初に編む葦は、2本ずつセットにして、それを普通の糸(今回は白と赤を使った)で大雑把にぐるぐる巻きにして固定します。同様のセットを7本つくります。
 
 
こんな感じ。
 
 
 
さて、全ての準備が整ったら、いよいよこんどこそ編みます。
まず、用意しておいた木製の土台石の組み合わせを乗せていきます。
このセットは最低でも11セット必要です。
 
 
 
 
で、葦を順に乗せていきます。
 
土台に葦を乗せて、毛糸がついた石をひとつずつ葦の上から交差させることで、葦を固定していきます。
 
 
 
 
すべての石を交差させたら、またその上に葦を乗せて、また毛糸つきの石を交差させて葦を固定していきます。
 
この行為を繰り返すことで、毛糸-葦-毛糸-葦-毛糸-葦という風に組合わされ、葦がしっかり固定されていきます。
 
 
勿論、簡単に壊れる事がないように、両端に関しては石を少しずつずらしながらジグザグに編んでいく事で、工夫します。
 
 
こんな感じ
 
 
 
さて、実はこの作業、はじめからビデオ撮影をしていたのですが、いつまで続くのかなーと思ったら、なんと1週間ずっと続けるそうです。そりゃそうですよね、ウイ一件分ですものね。撮影しきれない。。。
 
 
と、いうことで、途中で撮影はやめてしまいましたが、このように地道にこつこつ石を交差させながら、編んでいきます。編んでいるとき、ちょろちょろ様子を見に若い子どもたちがやってきたりしてました。お手伝いしながら、作り方を学んでいくのですね。
 
 
 
 
 
というわけで、以上がアクチーについての作り方でした。えー、筆者の日本語能力の関係で、へたくそな説明でなんだか申し訳ないです。。。いずれ、撮影したビデオについてもまとめてUPできたらいいなと思っています。
 
 
さて、次回は「オラガンチー」について、ご紹介したいと思います。
同じ葦の筵でも、作り方が全く違い、非常に興味深かったです。