今回から、少しずつ、カザフの食生活について、書いていきたいと思います。
 
 
カザフ人(カザフ牧民)たちの食のサイクルは、夏季と冬季に大きくわけて考える事ができると思います。サイクルについて、もう少し詳しく言いますと、秋、少し寒くなってきた頃から家畜を屠りはじめ(小型家畜の屠殺の開始)、冬に入る手前で冬からの食料を準備し(大型家畜の屠殺および小型家畜の一定量の屠殺)、冬はその家畜の肉を食べ、春から夏にかけて母家畜の乳の出る量が増えてくると少しずつ乳製品作りをはじめ、夏は乳製品メインの食事に切り替えていく、というサイクルです。夏に乳製品については、すでにblogである程度ご紹介したので、この冬は屠殺の習慣/方法/肉の調理方法を中心に、また普段どのようなものを食べているのか(小麦粉や米を使った料理など)、ということを紹介します。
 
 
今回は、小型家畜の屠殺方法と内蔵の処理方法について、少しご紹介します。
今回屠殺の際に撮った過程の写真を載せていますが、一部ちょっとショッキングな写真もあるかも?です。みてびっくりされちゃう前に、書いておきます。
 
 
 
まず、これはとても大事なことなのですが、カザフ人は血を食べません。宗教的に血は不浄なものであると考えられており、そのため家畜を屠る際には、まず首の頸動脈を一気にかっ切って血を出します。屠殺をはじめる前に、必ずコーランの一部を読みます。
 
 
↑ばーっと一気に血を出す。血は地面には流さない。
 
 
しっかり血を出したあと、お腹の部分の皮をナイフで切り、全体の皮をはぐ作業に移ります。四肢の部分の皮は、関節を外してから剥いでいきます。
 
 
 
 
皮を剥ぎ終わったら、頭を切り落とし、食道を結んで、吊るします。うしろ足の筋の部分に穴をあけて、そこに紐をとおしてぶらーんと吊るします。吊るしたら、お腹の部分を切って、心臓と肺臓以外の内蔵(胃腸の部分)を出します。
 
 
 
 
ここからの作業は、男性&女性の二組共同作業。男性は、そのまま肉を細かく骨&筋に沿って切り落としていきます。首周りの肉と頸骨をそぎおとし、胸回りの肉をおとし、胸骨をおとし、腰骨をおとし、おしり、足となり.....
 
 
↑あれよあれよという間にこんな感じに。
 
 
男性が肉を切り分けていく間に、女性は内蔵をキレイにしていきます。
 
 
胃や腸の中に残ってしまったモノを水やお湯でしっかりと洗い流します。とても大量の水を使ってとことん洗います。特に食べる部分は、塩を揉み込み、念入りに洗います。胃の中に脂肪を詰めたりもしてました。この脂肪、とろんとしててまろやかで、とても美味しいんです。また、直腸にも、キレイに洗ってから肉を詰めたり脂肪をつめて食します。
 
↑胃&反芻胃を洗浄しているところ。
 
↑しっかり水で洗って、塩を揉み込んで....
 
↑こんな感じになる。
 
 
 
食べない部分は、単に捨てるのではなく、利用できる部分は利用し、捨てる部分は犬にあげてました。(ちなみに、固まった血も犬に与えていました。)「利用」とは例えば、反芻胃は、中をキレイにした後で、保存用の肉や乳製品を詰めたりするのに利用します。大腸は、食べるようにもとって置きますが、それ以外にも、乾燥させて後で油として利用したりします。また、小腸は、キレイに洗ったあと、市場に売りにいきます。
 
 
↑ながーい小腸。これは食べない。市場に売りにいく。
 
 
内蔵まわりについていた脂肪は、ひとつ残さず全て丁寧に集めます。それはそれは、ものすごく念入りに集めます。この脂肪は、後に細かくされ火にかけられ油としてご飯(特にバオルサックと呼ばれる揚げパンのようなもの)を作る時に用いられます。
 
 
↑集めた脂肪はしばらく放置して乾燥させたあと、細かくする作業に。これがなかなかの重労働。
 
 
ちなみに、切り落とした頭はといいますと......
 
 
 
焼きます!しっかり焼いてから切れ目をいれ、まっぷたつにして、しっかり煮て食べます。
 
 
このようにして、屠殺された羊(ヤギ)ですが、一体どんな風に食べられるのか。
次回は、肉や内蔵の食べ方について、少しご紹介したいと思います。
続く!