コルダスに着いた翌朝。

明るくなってから家の造りをよく見ると、ウルギーのカザフ人の家にはなかったものが・・・
 
 
これ、ご飯作るところかな?
ウルギーで使われている炉とはまるで形が違うけど・・・。
 
「これは、オシャクっていうのよ」
 
 
オシャク?あれ、なんかウルギーでも聞いたことがあるような?
オシャクって確か五徳のことだったような。
 
このオシャクと呼ばれる炉には大きな鍋が二つ乗せられるようになっています。
この家では、小さい鍋が60ℓ、大きい鍋が100ℓ容量とのこと。
もっと大きい鍋になると、200ℓ容量のものも!200ℓ鍋の事を、タイ・カザンというらしいです。タイとはカザフ語で2歳馬のこと。つまり、2歳馬が入っちゃうくらいの大きさって意味だそうです。わぁ。
 
 
 
 
燃料には、木と乾燥したウシのふん(テゼック)、小家畜のふんと土が合わさって乾燥したもの(カイ)を使用していました。これはウルギーと一緒でした。この辺りは、家畜を飼っているからふんを燃料にできるけど、家畜を飼ってない地域だと燃料は木材だけなのかな・・・?
 
 
調理スペースを出ると、もうひとつ、初めて目にする空間が・・・。
 
 
 
 
なんだろう、この居間みたいなスペースは。
 
 
「これは、ロシア語でタプシャンっていうんだよ。普段はみんなここに座ってお茶飲んだりするんだ。え?カザフ語でなんていうかって?いや~、カザフ語で・・・なんていうのかわからないなぁ・・・」
 
と、親切な親戚のおじさんが教えてくれました。
 
ふむ。カザフ語でこの空間を指す言葉がないってことは、元々カザフ人たちの生活の中になかったものってことかな?
 
 
お昼頃になると、おばあさんも起きてきました。起きてすぐ、すーっと静かにタプシャンの端っこに座りました。
 
 
 
 
見た感じ80歳は超えているだろうというおばあさん。この人が昨日のあの敷物を作った人なんだろうか。お話聞けるかなぁ・・・。
 
「こんにちは。日本からきました。カザフの文化に興味があって、特に装飾文化について調べています。あの家にあった敷物は、貴方が作ったものですか?」
 
と、聞いてみた。
するとおばあさん、反応がいまいち。
 
 
「耳の聞こえが悪いのよ」と、奥様。
 
 
まぁ、いきなり初対面でいろいろ聞くのも失礼だよなぁ・・・と思ったそのとき、おばあさんの方から話しかけてくれました。
 
 
「どこの人?カザフ語わかるの?」
「手が・・・手が痛くてねぇ。」
 
 
他の言葉もいろいろつぶやいていたけど、なかなか聞き取れない。
家の人からきいた話ですが、このおばあさんはキルギスから嫁いできたんだそうです。
おお・・・ますますいろんな話が聞きたいけど・・・今の私のカザフ語能力じゃ無理だ・・・。
 
 
おばあさんと私のやり取りを見ていた家族の人たちが、おばあさんに私のことを説明してくれました。私がカザフの装飾文化や手芸について興味があると伝えてくれました。するとおばあさん、ヒツジの毛の糸紡ぎをしているところを見せてくれたのでした。
 
 
 
 
 
「こうやって、こうやってやるんだよ。優しく・・・」
 
 
と、糸巻を回す手にはまるで力が入っていない感じ。スカスカな感じにみえました。
指先でちょいちょいっと糸巻を動かしているだけ。でもしっかり、糸巻をまわして糸を縒っていきます。
 
 
 
 
「わたしもやってみていいですか?」
 
 
と、言ってみた。糸巻を回されてえいっと巻く。ヒツジの毛を糸巻きで巻くのは、実はこれが初めての体験。さっそく、ぶちっと切れた。力の入れすぎ。焦らず、焦らず、もう一回・・・。今度は、くるくる回せた!
 
 
「おお!できてるじゃないか。さすがカザフの嫁!」
 
 
と、まわりの家族がひやかしてくる。だから、嫁にはならないってば~。
 
 
そのあとお孫さん(?)も挑戦。「こんなの簡単だよ~」と言ってはじめたのですが、もう切れる切れる。全然糸巻を回せてない。
 
 
「ああ、ああ。そうじゃないよ、いいかい、こうやって・・・」
 
 
と、おばあさんは優しく教えてあげてました。お孫さんをみつめるおばあさんの眼は、本当に暖かくみえました。
 
 
 
 
その後、タプシャンでおばあさんと一緒にお茶を飲むことに。
 
 
「あたしはもうあっちの世界に呼ばれてるんだけどねぇ。でもあっちに行ったら、このお茶は飲めなくなるだろう。おいしいお茶が飲めなくなるのは嫌だねぇ。」
 
 
やっぱり、お茶は大事なんだなぁ。
 
 
お茶を飲み終わるとおばあさんはお休みに。
素敵なものをたくさん見せてくださったおばあさんに本当に感謝です。
 
 
コルダス滞在話、まだまだ続きます。