イヌワシ狩りは、バヤンウルギーのカザフ人達の代表的な文化のひとつと言えるでしょう。事実、バヤンウルギーには多くの鷹匠がいます。
バヤンウルギーにおけるイヌワシの飼育と狩りについて、少しご紹介します。
鷹匠は、冬の間に目をつけたおいたイヌワシの巣から雛を盗み出します。このとき、メスを選ばねばなりません。狩りを積極的にするのはメスだからです。調教は夏期に行います。10月から3月の冬期には、キツネ、マヌルネコ、ウサギなどを対象に毛皮猟を行います。暖かい時期にたっぷり太らせた後、10月前から絞り込み、空腹状態にさせて狩りに使います。
狩りの際は、騎乗して、バルダックという肘置き杖でイヌワシをのせた腕を支えます。非常に鋭い爪から腕を保護するために、分厚い皮で出来たビヤライという手袋をはめています。この時、イヌワシにはトゥマガというマスクがはめられています。山頂についたらトゥマガをはずしてやって、獲物を探します。イヌワシが獲物にアタックするときの速度は時速160kmに及ぶと言われており、まさに一撃で仕留めます。
こうしたカザフのイヌワシ文化やイヌワシ狩りの様子を一目見ようと、近年海外から多くの観光客がバヤンウルギー県を訪れるようになっています。カザフのイヌワシ文化は、カザフの人々の誇りの象徴であり、また、外からやってくる多くの人々を魅了し続けています。
【参考】
西村幹也(2011)「モンゴルのカザフ人」日本とモンゴル第46巻第一号(123号)pp25-pp37
西村幹也(2005)「ウルギー!カザフ!万年雪を仰ぎ暮らす人々を訪ねてその4」しゃがぁvol41, pp10-11
《イヌワシ狩り:文責》カザフ情報局ケステ管理人 廣田千恵子