カザフ人はイヌワシを使った毛皮猟を行うことで有名です。イヌワシ狩りの際には、馬を使って移動します。鷹匠は、馬で高い岩山の頂上からイヌワシを放ち、その後、岩山を駆け下りなければなりません。上下動の激しい状況下を、大きなイヌワシを腕に乗せて素早く移動し、また、飛んでくるイヌワシに対応した体裁きも要求されます。このため、カザフの人々は、繊細かつ大胆な乗馬技術を有しているのです。
カザフの人々の乗馬技術を、目の当たりにすることができるのが毎年秋にバヤンウルギー県で開催されるイヌワシフェスティバルです。ここでは、イヌワシフェスティバルで目にする事ができる乗馬競技をいくつかご紹介しましょう。
★ククパル
ヤギを馬上で奪い合う競技です。
額を叩かれて絶命したヤギが地面に横たわっています。競技は、競技者2名が馬上からヤギをすくい取るところからはじまります。馬を動かしながら、引っ張り合い、ヤギを奪い取るか、相手を馬から引きずり下ろしたら勝ちとなります。ヤギを馬上から持ち上げるだけでもかなりの腕力と乗馬技術を要します。
ヤギを抱えたら、カザフの男達の真剣勝負がはじまるのです....。
★ティエンイルゥ
ティエンイルゥとは、直訳すると”コインすくい”という意味です。
ルールは、まず2m程度の間隔で、地面にコインが置かれます。そして、馬の足を止めずに、馬上から体を乗り出して、コインをすくいあげます。次第にコインが置かれる間隔は狭まります。最多数コインをすくい上げた人が勝ちとなります。馬上から体を乗り出す際に、かなりのバランス感覚と馬を制しておく為の高度な乗馬技術が求められます。
★クズコアル
クズコアルとは、男女二人で組になり、女性は男性を鞭でたたきながら追い立て、男性はその女性からおもしろおかしな演出をしながら逃げる、というものです。馬で走り出す前に、男性が女性にキスをするのですが、それは求婚の合図ということで、それに対する女性の返事がOKであるならば男性を追い立てます。これは、実際にカザフの習慣であったそうです。かつては、逃げる男性と追う女性が走り回ることで、二人がこれから夫婦になることを周知させていたようです。
【参考】
西村幹也(2011)「モンゴルのカザフ人」日本とモンゴル第46巻第一号(123号),pp25-37
西村幹也(2009)「Photo reportイヌワシ祭-2009.9.19〜20-モンゴル国バヤンウルギー県」しゃがぁvol.47,pp22-25
《騎馬文化:文責》カザフ情報局ケステ管理人 廣田千恵子