4月はじめにバヤンウルギー県アルタイ郡にいってきました。今回から、アルタイで見聞きしたことを少しずつ更新していきます。少し文章を多めに、旅の様子を綴ってみたいと思います。
アルタイ郡は、私が普段お世話になっているホストファザーのクグルシンさんの故郷です。今回はクグルシンさんの弟さんの”ババイさん”の家にお世話になりました。ババイさんには、二人のお子様がいて、長女のアイジャンは県央の学校に通う為、普段はクグルシンさんの家に居候してます。(ちなみに、ババイさんの家には、去年の6月も訪問していて、このblogにも夏営地への移動の話しなどを書きましたので、宜しければご覧下さい。)
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それは、ナウルズの時のこと。アイジャンが「もうすぐトクサン(休み期間のこと)になるから実家に帰ろうと思うんだけど、姉さんも一緒に行く?」と聞いてきた。4月はやることが多くて、最初はあまり乗り気ではなかったけど、アルタイは景色もいいし、なんとなく、気分転換にいってみようかなと思い、結局行く事に。
アルタイ行きのタクシーは、あまり本数が多くなくて、市場に行っては尋ね歩きながら探す。4月4日木曜日の午後、タクシーが見つかったので、出発する事になった。15時頃、家にタクシーがやってくる。田舎行きのタクシーは、ロシア製のジープかワゴン。アルタイは県央から120kmほどの近いところに位置しているのでジープで向かう。移動時間は平均4時間。もちろん、モンゴルなので、道中いつ何が起こるかはわからない。時間は計算しない方がいいのは重々承知の上での話しだ。
さて、運転手込みの5人乗りのジープに、私たちが乗ろうとしたときには、すでに先客が.....。前の座席に運転手と大人1人、後部座席に子ども3人と大人3人が既に乗っている。え、どうやって乗れっていうの....。
なんとか狭いスペースをあけてもらったけど、それで1人分。結局アイジャンが私の膝の上にのって移動することに。お、重い。私より遥かに体重が重いであろうアイジャンがどっすりと私の膝の上に座り込む。出発3分でもう足がジンジンしてくる。
これで4時間耐えるのは、ちょっと無理なんじゃないか?と思ったとき、横に座ってたおばさんの口から残念な一言がぽろりと漏れる。
「これからまだ増えるわよ」
え”。一体どうなってしまうんだろう....?5人乗りのジープにすでに大人7人と子ども3人が乗っているというのに。結局その後ウルギー市内をぐるぐると2時間もまわり、さらに大人1人子ども4人を乗せ、一台のジープに15人詰め込まれた。まったく、景色をたのしむどころじゃない。運転手は、運んでやるんだからいいだろうって顔してる。「くそう。金ばっかり取って!」っと、アイジャンがぼそぼそと文句をこぼす。午後17時30分、ようやく車はウルギーを後にして南へ進む。
★途中下車のときに。今回はこのジープで移動でした。
アルタイまでの道の状況は他の地域に比べればまだいい方だけど、それでも自分の座るところを確保するのがやっとの状況の中、4時間の移動は地獄以外のなにものでもない。結局、隣にいたおばさんが前に行き、アイジャンが隣に座り、アイジャンのかわりに小学校3年生くらいの男の子を乗せて移動することになった。
わたしの左横に座ってたおじさんは、こころよく別のカザフ人の女の子を膝上に乗せてたけど、あの子、絶対60kgはあっただろうな。一瞬私の上にも乗ったけど、無理!!!!と思って、すぐにどいてもらった。さらにその女の子の上に、小学校6年生の女の子が座っている。3人重ねだ。おじさんの優しそうな顔が徐々に険しい顔になっていったのが、内心ちょっとおもしろかった。
車の中からはいろんな会話が聴こえてくる。カザフ語だけじゃなくて、モンゴル語も聴こえてきた。一番左端に座ってた女性はモンゴルの民族衣装を着ている。アルタイに住んでいるモンゴル人らしい。そういえば、アルタイ村ではモンゴル人が歩いているのをよく目にする。男性も女性も、民族衣装を身にまとっているから、すぐわかる。その彼女の子ども達が、5人同乗していた。うち3人は、後ろの荷物と一緒に混ざっている。小さい子どもは、荷物と一緒に跳ね上がる度に、きゃきゃと楽しそうに騒いでる。うーん、子どもになりたい。
★ぎゅうぎゅう詰めの移動も、楽しい旅に変えてしまうモンゴルの子ども達。
助手席にはカザフ人のからだの大きなおばちゃん2人が押し込められた。助手席のドアは、道ががったんごっとん大きな窪みに入る度に、自動ドアのようにバーーーーーンと開く。いやいやいや、危険すぎるでしょう。それでも、性格が大らかなおばちゃん達は文句ひとつこぼさずゲラゲラ笑いながら、ドアが開く度に力強く思い切り引っ張って閉める。
18時近くになって出発したので、暗い中での走行となった。あんまり車に強い方ではないので、酔わないように意識を保っているのに必死だった。がたがた道は当たり前。崖脇を通ったり、溶けそうになってる氷の河を渡ったりと、難所は盛り沢山だ。それでも、ジープは大きなエンジン音を響かせながら進む。
突然、アイジャンが寒い寒いと泣きそうな声で訴えてくる。一番右端に座っていたアイジャン。脇の扉には大きな隙間があって、その隙間からかなり冷たい風が入ってきていたのだ。生憎の前日の雪のおかげで、風は普段より一層冷たい。仕方なく、着ていたダウンジャケットを脱いで、扉を塞ぐのに使わせる。
私は薄いジャケット一枚になり、今度は徐々にこっちのからだが冷えていく。アイジャンと、斜め前にいた小学校6年生の女の子と手をつないで暖め合いながらやりすごす。この小学校6年生の女の子は、一人でウルギー&アルタイ間を行き来しているという。この子はカザフ人だけど、モンゴル語も話せるし、英語も勉強しているらしく、いろんな言葉で話しかけてくる。
こんな子どもも一人で移動できる。周りの大人が、子どもを助けてあげるのだ。子どもだけじゃなくて、大人同士でも声をかけあって、助け合う。よくわからない日本人の自分にだって、とても親切にしてくれた。なんだか安心して旅ができる。今回はそのまま突っ走ったけど、途中で下車して道中の家庭でお茶を飲む事もある。(その場合、親戚の家だったり、友人の家だったりすることが多い。)運転手も、すれ違う車が知り合いの車だったら、車を止めてのんびり挨拶を交わす。故障してる車があったら、止まって援助する。ここでは、人々は変に時間に捕われることなく、その場の状況にあわせて焦らずゆっくり進む。ジープでの旅は疲れるけど、でも、とても楽しい。
気がついたら時刻は21時30分をまわっていた。前方にアルタイ村の光がうっすらと見えてくる。村の中に入ると、まず助手席のおばさん達が降りていく。とくにさようならを言う事もなく、さらっとどこかへと行ってしまう。私はやっとアルタイに着いたのが嬉しくて、思わずにやにやと顔がゆるんでしまう。くるっと左を向くと、モンゴル人のおばさんとぱちっと目があう。私はよほどアホっぽい顔をしていたのだろう。私の顔をみた瞬間、それまでずっとだんまりだったおばさんが、ゲラゲラと笑い出す。それにつられて子ども達もゲラゲラと笑い出す。私もつられて笑ってしまう。ほっとした瞬間だった。
車を降りたとき、ものすごく冷たい空気にびっくりしたけど、それよりも頭の上に広がってた綺麗な星空にもっとびっくりした。手はひんやり冷えきってたし、足はガクガクいってたけど、でもその星をみただけで、まぁいっか、って気分になってしまう。アイジャンの家は、村からに5kmほど離れたところにある。この日はもう真っ暗になっていて、徒歩で移動するのは危険すぎるので、村の親戚の家に泊まる事になった。お肉と麺スープを出してもらい、暖まってから、アイジャンとふたり同じベッドに潜り込んでぱたりと寝る。.....ぐうぐう。