その他の手芸

その他の手芸 (3)

日, 03 1月 2016 11:50

ウルギーのトゥバ人

Written by

2015年8月30日、日がやや傾いてきた夕方に、我々はこの日の目的地ボロルさんのお家にたどり着きました。

 

ボロルさんのことは国境通行許可証を出してくれた旅行社に紹介してもらいました。もちろん、初対面。「はじめまして」です。事前の連絡もしないで突然お邪魔した我々でしたが、あっさり受け入れていただきました。どうやら観光客にはなれてる模様。

 
 

ボロルさんの家に一歩足を踏み入れると、そこには若い女性とお婆さんと子供たちがいました。どうやら、その若い女性がボロルさん。とても優しそうな笑顔の、可愛らしい人・・・。


ここで、本当だったらボロルさんの顔写真をすぐに出してご紹介したいところなのですが、この時点ではまだ彼女の写真を撮っていなかったので、また続きを書いていくうちに出したいなと思います。なんといいますか・・・・いくらフィールドワークだからといっても、全くの初めてのお宅で、勝手も知らない場所で、初対面の方にカメラを向けられなかったのです。最近、人の生活を撮るという行為に少し抵抗を感じていて、フィールドにいてもあまり写真を撮れなくなってしまいました。(こうやって文章を書いていると、撮っておけばよかったなぁと思うんですけど・・・。)

 
さて、話はボロル家でのことに戻りますが、
 家の中に案内されてソファに座って、すぐに思ったこと。
 

「あれ、話してる言葉がわからない。」

 

彼らはモンゴル語でもカザフ語でもなく、トゥバ語で会話していたのです。と、思ったら運転手さんとカザフ語で会話をはじめ、と思ったら我々にモンゴル語で話かけてきました。すげー、完璧に使い分けてる・・・。

 

「モンゴル語とカザフ語がわかるのね?じゃ、トゥバ語も勉強して頂戴。」とニコッと笑うお婆さん。ボロルさんの旦那さんのお母さんだそうです。

 

ボロルさんもモンゴル・カザフ・トゥバ語が理解できていました。ただ、ボロルさんの子供たちはあんまりモンゴル語が得意じゃなさそうでした。カザフ語は通じましたが。ツェンゲル郡はモンゴル・カザフ・トゥバが共存する地域。自然と言葉も覚えていくのだといいます。学校でもそれぞれの言語を教えるんだとか。教科書とかどうなってるのかなぁと気になることは山のよう・・・。どうやらフブスグル県に住んでいるトゥバ人たちとは全く様子が違うみたいです。

 

お茶とご飯を出してもらって、おもてなしをしていただきました。しばらく会話を交わし、私が気になったのはやっぱり家の中の装飾品。家の隅っこにぐるぐる巻いて置いてあるあれはきっとフェルトの敷物のはず・・・。

 

「来ていきなりで申し訳ないんですけど、あの敷物が見たいなぁ・・・。いいですか?」

 

「いいよ」とボロルさん。敷物を広げて見せてくれました。これは素晴らしい・・・。

 

ひと針ひと針丁寧に縫われた綺麗な敷物。モンゴル・トゥバの文様が全面に施されています。中央の吉祥文様は「永遠の幸せ」を、敷物の縁に施されているT字の文様はモンゴルでは「金槌文様」と呼ばれて大事なものを守るための文様として使用されます。フェルトの上にはびっしりと刺し子が施されていて、手でふれるとその大変な作業の様子が伝わってきます。

「あなたが作ったの?」ときくと、「私とお母さんと一緒に作ったの。お母さんはもう亡くなったけど。」とボロルさん。

大事に保管されている敷物と、いつも使われてボロボロの敷物。
どちらの敷物も、とても大事にされているのがよくわかります。
 

敷物だけではなく、家の中を見渡すと壁にも装飾が。

「これもお母さんが刺繍したの。大事な宝物です。」とボロルさん。

 

人間の姿が刺繍されてる・・・。

 
かぎ針で施しているのかな?針かな?チェーンステッチみたいな感じだけど・・・。

イスラームを信仰するカザフ人が作らないようなものを作っている、その様子からトゥバの人達の暮らしをみてるんだなぁと改めて感じました。

 

・・・と、、突然ボロルさんが外の人たちに呼ばれました。外ではゲルを一軒建てようとしていました。続く。

日, 27 5月 2012 08:52

"オラガンチー"をつくる

Written by
前回は”アクチー”と呼ばれる白い筵のことについてご紹介しましたが、今回は"オラガンチー"についてご紹介したいと思います。
 
 
おさらいですが、"オラガンチー"とは、葦一本一本に色のついた毛糸を巻いて文様を浮かび上がらせた筵のことを指します。「オラ ora-」とは、カザフ語の「巻く、巻き付ける」という意味の動詞であり、「チー」は葦のことを指します。
 
 
さて、このオラガンチーの作成の様子、一体どこでみたのかというと、
 
マナイさん(私が泊まっていたところ)
 
のお隣の若旦那(マナイさんと共同で家畜を管理している/奥さんがアクチーを作っていた)
 
親戚のうちです。笑
 
 
近くに住んでたので、試しに遊びにいったら、
あれま、オラガンチー作ってるじゃありませんか!
 
 
なんだかとっても優しそうなおばあさんが住んでいました。
 
 
 
 
同じ”チー”と呼ばれるものでも、アクチーとオラガンチーは、全然違います。今回は、作成途中の様子を拝見させていただきました。なので、見たものを簡単にご説明したいと思います。
 
 
先にも書きましたが、オラガンチーは葦一本一本に色のついた毛糸を巻いて文様を描いていきます。その為、オラガンチーを作るためには、文様の下絵が必要です。
 
 
まずは、床の上に、文様の下絵を描いた布を敷きます。
 
 
 
 
予め、どこの部分はどの色の糸を巻くか決めておきながら、下絵の上に一本葦を置き、どこからどこまでが何色なのか、マーカーで印をつけます。
 
 
 
 
マーキングが終った葦に、丁寧に、隙間無く、くるくると糸を巻き付けていきます。
 
 
 
 
あとは、置いていった葦たちを、毛糸で結びながら固定していきます。(アクチーの時は、石を交差させながら毛糸を編んでいきましたが、オラガンチーの場合は、床において編んでいくので方法が異なるのです。)また、葦が模様の位置からずれないように、上に重いモノを置くなどして固定します。
 
 
さて、そのようにして編んでいったものがどんな風になるかというと?
 
 
ばーーーーーーーん!
 
 
 
 
なんじゃこりゃ!
すーーーーぱーーーーーかっこいいいいいいいいい!!!!
 
 
そしてこれをどんな風に使うかというと.....。
 
 
 
 
こんな風に、置かれるのですねー。
ウイの壁となる木製格子と、フェルトなどの外壁の部分の間に挟みます。
(当HP内の”カザフの装飾文化”にも説明がございます。あわせてご覧下さい。)
 
 
しかし、この作業、本当に気が遠くなるような作業です。一本にくるくる巻き付けていく作業だって、手も目も疲れるし。。。
 
 
夏のウイを美しく飾るオラガンチー。
オラガンチーが、ウイで見れる季節が待ち遠しいです^^
木, 24 5月 2012 06:49

"アクチー"をつくる

Written by
 
夏期になるとカザフの人々は、「ウイ」と呼ばれる移動式住居を組み立てて生活します。モンゴルの「ゲル」をご存知の方は多いかもしれませんが、カザフの「ウイ」はぱっと見た感じでは非常にゲルによく似ています。ただ、中に入ると、その構造が異なることがよくわかります。(当HP内の”カザフの住居”もあわせてご覧下さい。)
 
 
カザフのウイはモンゴルのゲルに比べて大きく内部が広いです。その理由のひとつには、「壁」となるジャバラ式の木製の枠組みの枚数がカザフウイの方が多いためであることが挙げられます。
 
 
さて、そんなカザフウイですが、その「壁」となる木製の枠組みと、外壁となるフェルト(および覆い)との間に、葦を編んだ筵(むしろ)のようなものを挟んで全体を囲みます。
 
 
問題はその筵ですが、勿論、日本のようになんでもかんでも出来上がったものを買うということはありません。そうです、自分で葦を編んで作ります。
 
 
この筵、実は2種類あります。
 
 
葦一本一本に色のついた毛糸を巻いて文様を浮かび上がらせた筵のことを、「オラガンチー」といいます。「オラ ora-」とは、カザフ語の「巻く、巻き付ける」という意味の動詞であり、「チー」は葦のことを指します。つまり、糸を巻いた葦という意味になりますね。
 
 
もうひとつは、色付きの毛糸を巻き付けずに、シンプルに葦だけを編んだ筵です。これを、「アクチー」と呼びます。「アク ak」はカザフ語の「白」という意味の名詞であり、白は、「色が無い」ものに対して使われます。
 
 
ラッキーなことに、今回のサグサイ村滞在中に、どちらも作成している様子をみることができました!
 
 
今回は、アクチーの作成方法について、簡単にご紹介したいと思います。
 
 
アクチーを作る為に何を準備したらいいのでしょうか?
 
 
①2種類の毛糸(羊毛糸と駱駝毛糸)
②普通の糸(白)
③葦
④アクチーを編む土台となる木材
⑤ごつごつした石(最低22個)
 
 
こんなもんです。
 
 
って、こんなもんって書きましたけど、まず第一の「毛糸」半端無く面倒くさいです。
実際、アクチーを編み始める前段階での準備に何日もかかっています。
 
 
羊の毛を用意し、その毛を少しずつひっぱりながらほぐし、ウルチク(urshik)と呼ばれる糸巻きに少しずつ巻き付けながら「糸」にしていきます。
 
 
姉さん、マナイ家にお茶のみにきたときも、糸巻き持参で登場。オドロキデス。
 
 
駱駝の毛も同様にくるくる巻いて糸を作り、毛玉が10個用意できたら、さぁいよいよ編む作業にうつります。
おっと、編む前に、葦の周りについている余分な部分を、せっせせっせとむきます。
 
 
 
 
こんなにむいたんですー。でも、これでも全然半分にも満たなかったんですー。
手が痛くなりました。ホントたいへんだった。。。
 
 
さて、葦も準備できたら、いよいよ編みます。まずは、羊と駱駝の毛糸を一緒にだいたい6〜7mくらい引き延ばします。手のひらいっぱいの大きさのをペアで用意し、それぞれに毛糸をまきつけ、天秤みたいなセットをつくります。
  
 
こんな感じ。
 
 


 
石の準備と平行して、葦の準備もします。
最初に編む葦は、2本ずつセットにして、それを普通の糸(今回は白と赤を使った)で大雑把にぐるぐる巻きにして固定します。同様のセットを7本つくります。
 
 
こんな感じ。
 
 
 
さて、全ての準備が整ったら、いよいよこんどこそ編みます。
まず、用意しておいた木製の土台石の組み合わせを乗せていきます。
このセットは最低でも11セット必要です。
 
 
 
 
で、葦を順に乗せていきます。
 
土台に葦を乗せて、毛糸がついた石をひとつずつ葦の上から交差させることで、葦を固定していきます。
 
 
 
 
すべての石を交差させたら、またその上に葦を乗せて、また毛糸つきの石を交差させて葦を固定していきます。
 
この行為を繰り返すことで、毛糸-葦-毛糸-葦-毛糸-葦という風に組合わされ、葦がしっかり固定されていきます。
 
 
勿論、簡単に壊れる事がないように、両端に関しては石を少しずつずらしながらジグザグに編んでいく事で、工夫します。
 
 
こんな感じ
 
 
 
さて、実はこの作業、はじめからビデオ撮影をしていたのですが、いつまで続くのかなーと思ったら、なんと1週間ずっと続けるそうです。そりゃそうですよね、ウイ一件分ですものね。撮影しきれない。。。
 
 
と、いうことで、途中で撮影はやめてしまいましたが、このように地道にこつこつ石を交差させながら、編んでいきます。編んでいるとき、ちょろちょろ様子を見に若い子どもたちがやってきたりしてました。お手伝いしながら、作り方を学んでいくのですね。
 
 
 
 
 
というわけで、以上がアクチーについての作り方でした。えー、筆者の日本語能力の関係で、へたくそな説明でなんだか申し訳ないです。。。いずれ、撮影したビデオについてもまとめてUPできたらいいなと思っています。
 
 
さて、次回は「オラガンチー」について、ご紹介したいと思います。
同じ葦の筵でも、作り方が全く違い、非常に興味深かったです。