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土, 25 5月 2013 03:40

アルタイ日記〜放牧〜

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すっかり5月になってしまいました.....。アルタイいってから1ヶ月以上経っちゃった。
が、気にせず書きます。今回は、ババイさんと放牧に言った日のこと。
 
***
ババイ家に来て3日目のこと。その日、タルガットの様子がいつもと違った。普段は着ないようなスーツを着て、おめかししてる。
 
 
どうやら、近くで開かれる茶会に招待されたらしく、今日は放牧には行かないとのこと。変わりに、放牧には、ババイさんが徒歩で行く事になった。
 
 
徒歩で行くなら!と思い、その日はババイさんと一緒に放牧についていく事に。朝11時頃、小屋からヒツジとヤギを出して、いざ出発!
 
 
 
 
「山に登るから、しっかりと暖かい格好をしなくてはダメだよ」と言われ、しっかりダウンジャケットを着て行く。ババイさんは、手に双眼鏡を持っている。ババイ家では、放牧のために大きく2つのルートを使っている。この日は、向かいの川を渡り、山を登る事に。この日は太陽は出ていたけど、風が大変冷たかった。少し上の方に行くと、綺麗な雪山が見える。本当にいい景色。
 
 
ちょっと登っただけで、すぐに息が切れてしまう私。ヒツジやヤギは、そんな私におかまいなくさっさと進む。朝は速く草を食べたいからっていうのもあって、やや歩くのが速いらしい。「(ヒツジとヤギは)私より全然足が細いのに、なんて健脚なんだろう」と、ぼそっとつぶやくと、ババイさんが笑った。
 
 
放牧の際は、家畜にしっかり草を食べてもらって、太ってもらわないと困る。だから、家畜に付き添う人間は、ただ家畜と一緒に歩いているだけではダメで、時々家畜に声をかけたりして移動のスピードを調整する。ずっと歩きっぱなしというわけではなく、むしろ、ゆっくりと座っている時間の方が長かった。
 
 
「アイ!アイ!座れー。なんてせっかちなやつらなんだ。ゆっくり草食べなさい。」
 
 
と、ババイさんは石に腰をかけながらぼやく。出発して暫くすると、家畜の群れが徐々にバラバラになっていく。ヤギはさっさと先頭を切って進んでしまう。対して、ヒツジはのんびり草を探しながら歩く。
 
 
それにしても、辺り一面を見渡してみると、ちょこちょこと黄色の草が生えている程度。こんなんで、家畜はお腹いっぱいになるのだろうか.......。
 
 
「ヒツジとヤギは、こんな草を食べるよ。これも、食べる。」と、ババイさんは私の疑問にも丁寧に答えてくれた。
 
 
 
放牧地に向かうと、他の牧民さんたちも家畜を放牧に出しに来ていた。近くによって挨拶を交わす。会話の内容は、近所で茶会があったとか、家であった出来事とか、うちの家畜は〜とか、そんな感じ。暫くぼーっと話をしていると、ババイさんがぼそっと、
 
 
「あ。家畜が混ざりそう。」
 
 
ぱっと家畜を見ると、離れていたうちの家畜が別の群れに急接近していた!一緒に話してた牧民さんの家畜と混ざりそうになっていたのだ。家畜が混ざると大変!あとでわけるのにひと苦労。ああ、どうしよう....!!!
 
 
幸い、牧民さんはウマで放牧に来ていたので、あっという間に群れに追いつき無事に家畜の群れを引き離すことができた。
 
 
 
 
ああ、よかった。するとババイさん、にこにこしながら、
 
 
「わはは、二人も(あたしとババイさん)一緒に放牧について来てて、家畜が混ざったらこりゃぁ恥ずかしいね。オヤターイ。」
 
 
......ババイさん、のんき。笑
 
 
その後も丘を登ったり降りたりしながら、家畜のごはんに付き添う私たち。ぼーっと眺めていると、なんだか勝手に歌でも歌いたくなってくる。そのくらい、いい景色。知ってるカザフの歌を口ずさんでみる。アケメ(父に)という曲だ。(ナウルズについて書いた時に、その歌のビデオをupしてます。)するとババイさんも一緒に歌い出す。なんて気持ちがいいんだろう。
 
 
 
 
ババイさんは、いろんなこと質問して来た。日本の生活のこととか。家畜がいないのに、生活は大変にならないのかとか。地震とか津波があって、怖くないのかとか。
 
 
自分も、ババイさんに質問してみた。主に家畜のこと。家畜にかけるかけ声のこととか、家畜の特徴のこととかを聞いてみた。(この話の続きは次回に。)ババイさんの家にいるヒツジとヤギは、300頭ちょっと。そのうち、50頭はお兄さん(クグルシンさん)の家畜で、あとは全部ババイさんの家畜だという。「そんなにいっぱい家畜がいるなんて、お金持ちですね」と言ってみた。すると、
 
 
「僕たちにとって、家畜は財産なんだ。ご飯にもなるし、売ってお金にすることもできる。長女(アイジャン)が2年後には大学に進学する事になる。そのときに、アイジャンが望むようにしてあげられるように、お金が必要になれば、この家畜を売ってお金を工面するつもりさ。だから、家畜は大切なんだ。」
 
 
そう話していたときのババイさんの顔は、娘に幸せになってほしいと願う、本当に優しいお父さんの顔だった。
 
 
ぐるっとまわってまわって、午後2時をまわったころ、ヒツジとヤギを残したまま、一旦家に戻ることにした。家に向かう道の途中で、突然ババイさんが「あ。」と言って立ち止まった。
 
 
彼の目線の先をみてみると、丈の短い草が生えている。でも、その草の色が......緑だ!
 
 
 
 
「いやぁ、緑が出て来たねぇ。もうすぐ暖かくなるだろうねぇ。」
 
 
と、やっぱりにこにこしながら、草を見ていた。
それから家に戻って、私は少し疲れてしまい、ゆっくりお茶を飲んでくつろいでいると、ババイさんがいつの間にかいなくなっていた。午後4時頃の事だった。ババイさんは、疲れているだろうと、私を気遣ってだまって放牧地に戻ったのだ。
 
 
最後まで、一緒に行けなかったのは残念だったけど、ババイさんと二人で放牧にいって、家畜に関する色んな話を聞く事ができた。これについては、また次回。

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