ツェンゲル郡の中心部を出てジープで山に向かってどんどん進む。
美しい景色を眺めながら、がたごと道を越えていきます。
大自然を満喫しながら、運転手さんともいろんな話を交わしながら、進むこと2時間。
そろそろちょっと疲れてきたなぁという頃に運転手さんから朗報が!
「ほら、あの山を越えたらもうすぐだよ!」
わぁ、もうすぐだって!と喜ぶ私と友人。
もうすぐ・・・もうすぐ・・・・・
と、そこから更に進むこと2時間。
(どこが「もうすぐ」なんだろうねっていう)
山越え谷越え、やっと目的地タウン・ボグド山脈の麓に到着しました。この日はこの麓に住むトゥバ人の家に泊めてもらう予定でおりました。
ところが・・・・・・
われらの行方を阻むものがあったのです・・・
麓に到着してすぐ車を止められました。そう、麓には「国境警備隊」がいるのです。国境付近を通過するときはこの警備隊の許可を得なくてはいけません。出発前に旅行社からもらった許可書とパスポートを提示して通過の許しを得ます。ここで問題発生・・・・・。
「ん?許可書に書いてある車じゃないぞ?運転手の名前も違うし。通訳も案内人もつけてない外国人はここを通すわけにはいかないなぁ。残念だけど、帰りなさい。」
・・・・・・なんですと!?
帰れ????!!!!
目的地を前にして帰れとか、言われたことないし!!!
「われら二人とも言葉わかるから通訳要らないよ!旅行社からも、言葉分かるって言えっていわれたんだって。案内人は、ほら、運転手さんがいるし・・・車は我々の生じゃなくて、旅行社の手配ミスでしょう??」
「ダメなものは、ダメ。規則だから。」
「えええええええええ!!!!ここまで来るのに5時間もかかってるんだよ!?やだーーーーー!!帰りたくない~~!!!」
「残念だったね。ダメ。」
なんとここまで来て、帰れと言われたのです。ショックでした。車の中でダダをこねていたら、警備兵が3~4人車のまわりを囲って帰れ帰れと言うのです。許可書と違う状況にあるのは旅行社側のミスなのに・・・・・・・納得できない!!でも彼らはそうやって、間違った許可書を持ってきた旅行客を既に何人も追い返しているというのです。
警備兵は我々を通すつもりが全くなくて、違う話を始める始末。
「モンゴルに住んでいるのか?モンゴル語どうやって学んだんだ?」
「彼氏はいるのか?」
「俺たちと友達になるか?」
おいおい、なんだその質問・・・
そんな駄話をするためにここまで来たわけではな~~~い!!!我々はひたすら交渉を続けます。
「モンゴルはどんなところだ?いいところだろう?」
という質問に対し、友人は
「ここから先に通してくれたらいいところだなぁと思う!」
と返し、「なんてやつらだ」と笑われる始末・・・。
私も私で、
「お兄さんたちがお付きとしてきてくれてもいいんだよ?ね、一緒に山登りしようよ」
と口説いてみると、
「なんてやつだ!お前たちは帰るんだよ!俺だって町に帰りたいくらいだ。」
とあっさりふられてしまいます。
真面目に真剣にごねてもごねても、なかなか通してくれません。「書類に不備があるからだめ」の一点張り。
この事態を旅行社に電話したくてもそこはすでに携帯の電波すら届かない場所。電波が届く場所まで戻るためにはまた4時間車で走って郡の中央まで戻らなくてはいけません。帰れってことかい・・・・。
警備兵によると、ひと月前(2015年7月)に無許可でタウン・ボグドを登ったモンゴル人登山家5人が雪崩に巻き込まれ亡くなったそうで、それ以降厳しくチェックするようになったというのです。
「危険な地域なんだ。許可書がないやつは通せないぞ。帰りなさい。」
そんな・・・・そんなぁ・・・・・
ほぼ諦めかけながらも、最後の力を振り絞ってもう一度ごねてみる。
「ここの麓にあるボロルさんってトゥバ人の家に行きたいのです。ボロルさんの家までしか行きませんから。危ないことは絶対にしませんから。先に進む場合もボロルさんたちと一緒に動きますから・・・・・お、お願いします・・・・・・」
すると、警備員さん
「わっはは!ダメだ、ダメだ!許可がないやつは通れないんだ!さっきも旅行客を追い返したばかりなんだぞ・・・」と言いながらも、
「本当はダメなんだぞ」と言って、車から離れていきます。
あれ?
運転手さんが、エンジンをかけます。
何が起きたのかよくわかっていない私。
「許可がおりたみたい!」と友人。
ええええ!いいの!?いいの!!!??
交渉すること約40分、ようやく通行許可を得たのでした。
「ありがとう~~~~!!!本当にありがとう~~~~!!!!!」
車から大声で叫びました。
というわけで、日も暮れかかってきたころ、ようやく目的地ボロルさんの家に向かって再出発できたのでした。ボロルさんの家は国境警備隊のいたところから小さな坂を登ってすぐのところにありました。
なんだ、目と鼻の先だったんじゃん・・・
「もしかして、私たち遊ばれたのかな?」と友人。
いや、まさか!まさかまさか・・・
とにもかくにも、やっとの思いでボロルさんの家に到着し、ボロルさんにご挨拶することになったのでした。続く。
***
ちなみに、国境警備隊から通行許可を得なければ国境付近はいかなる場合であっても通行できません。これは事実です。国境警備隊に提出する書類は通常旅行社にお願いをして作成してもらいます。本来であれば、書類に不備があった時点で通してもらえないのですが、今回は国境警備隊の目が届く範囲までしか行かないということを条件に特別に通してもらいました。とはいえ、モンゴルはどこに行くのも大自然と隣り合わせ、危ない地域であることに変わりはありません。田舎に行くときは現地に精通しているコーディネーターと一緒に行動することをお勧めします。