今回もケンデバイ家で見た事について。
夏営地に移る前のこの時期に、いくつかやらなければならない大切なことがあります。
今回はそれらについてご紹介したいと思います。
ひとつは、「山羊の毛刈り」です。
カザフ語で、櫛で梳かすことを、「Tara-」といいます。山羊の毛を櫛で梳かすことで、毛を刈るのです。
まず、毛を刈る山羊を捕まえます。
山羊の前足と後ろ足を交互に交差させながら、縄でしっかりと結び固定します。
当然、山羊はもうびっくりして、バタバタと抵抗するのですが....
その必死な山羊を見てるのが本当に面白い!!!笑
メェーーーーーーー!!!(訳: やめてーーーーーーー!!!)
メェーーーーーーーーーーーー!!!(訳: 離してーーーーーーーー!!!!)
メェーーーーーーーーーーーーーー!!! (もはや訳せない)
縛られて横たわっている山羊(めす)の乳をちゃっかり飲みにくる仔山羊ちゃんもいましたが。笑
一頭を二人掛かりでやって、20~30分くらいでしょうか。
解放されたときの山羊のほっとした様子がまた面白い。笑
自分も実際にやってみたのですが、それほど難しい作業ではありません。ですが、やはり、ケンデバイさんの梳かし方と自分の梳かし方は全然違います。私は、ついつい力を入れて引っ張ってしまったのですが、ケンデバイさんは力づくではなく、でも確実に丁寧に梳かしてました。
こうして、梳かされ刈られた山羊の毛が、市場で売り買いされ、加工され、冬に我々の手元に届くというわけですね。^^ 牧民さんたちの大事な経済資源というわけです。(ただし、今年は取引先である中国の経済状況に影響されてか、取引価格が例年と比べて暴落してしまい、牧民さん達もだいぶ厳しい様子でした。今年は1kg=45,000tg/約3,000円程度)
ちなみに、この作業は、ウランバートルの隣に位置しているトゥブ県のモンゴル人家庭では、4月5月頃に行われていました。しかし、バヤンウルギー県はトゥブ県より平均気温が低いため、山羊の状態を考え、温かくなってきたこの時期に毛を刈るんだそうです。
さて、もうひとつの大事な作業、それは「去勢」です。
去勢することを、カザフ語では「pic-」と言います。
今年産まれた子羊と子やぎの去勢をするのです。
2〜3人掛かりで行う作業です。子羊、子やぎを捕まえてひとりが前足をしっかり握り、もうひとりがナイフで皮をちょいと切り裂いて、中にある睾丸をぶちっと手で取り出します。もう、ぶちっと。
どうしようかなぁと悩んだんですが、ここではあんまりショッキングではない写真を公開しておこうかと思います。
睾丸はそれほど大きくなく、手のひらよりも小さいくらいです。取り出されたものは、別に食されたりすることもなく、そのまま廃棄されてしまいました。ぽいっとね。
子羊は、あんまりギャーギャー騒がず、どっちかというとびくびく震えてるだけでしたが、子やぎは、もうわめくは叫ぶは暴れるはで大変でした。でも、去勢後は、子羊も子やぎもシーーーーンと静かになってました。。。おいばやーーーい。。。
「毛刈り」、「去勢」とおこなって、さらにもうひとつ。
「カイーの整理」もしなくてはいけません。
これは、カザフ語では、カイー(kii)と呼ばれています。
羊や山羊の糞と尿が土と混ざりあって柔らかくなり、のちに固まったものです。用途は様々ですが、例えば燃料として燃やしたり、冬期に防寒対策として家畜の小屋の中に敷かれたりします。辞書などを見ると、肥料、こやし、なんて書かれ方をしています。
↓冬の小屋の中。カイーがずらっと並べられている。
ケンデバイさんのところのような田舎には、勿論沢山のカイーがあるわけですが、例えば、村で家畜を飼育している家庭は秋頃にこのカイーを購入して手にいれるのです。彼のところも、勿論販売しているわけで、5tg=約100,000〜120,000tg/約6,700〜8,000円で販売しているとのことでした。こういったものも、牧民さんの大事な収入源になるわけです。
というわけで、夏営地に行く前に、自分たちの小屋にある糞の掃除をしたり、去年小屋に敷いたカイーを外に運び出して整理するわけです。これがまた結構な重労働なのです。しめっぽいし、かびくさいし、重いし、腰にくるし。運ぶ作業がおわったあと、子どもたちはへとへとでした。
と、いうわけで、こういったやらねばならないことを済ませてから、やっと移動準備!となるわけですね。いやぁ、ホント、毎日毎日、いろんな仕事があるのです。。。