モンゴルのカザフ人
ここでは、モンゴル国に居住しているカザフ人について、ご紹介します。
★人口/居住地/生業
モンゴル国には、2007年現在、約14万人のカザフ人が居住しています。カザフ人は、モンゴル国内の少数民族の割合のうち、第一位を占めています。
彼等は、主に首都ウランバートル市、ウランバートル近郊にあるナライハ市、ダルハン市、エルデネト市、モンゴル国西部に位置するホブド県、バヤンウルギー県などに居住しています。
中でも、バヤンウルギー県には、およそ9.3万人のカザフ人が暮らしています。バヤンウルギー県に居住しているカザフの人の多くは、季節移動型の牧畜を基本的な生業としています。
【参考】
西村幹也(2011)「モンゴルのカザフ人」 日本とモンゴル第46巻第一号(123号)pp25-37
★歴史 (バヤンウルギー県設立)
現在モンゴルに居住しているカザフの人々は、1840〜70年代にかけてアルタイ山脈の南麓から北麓へ移動してきた遊牧民でした。(詳細は「カザフとは ★歴史」を参照)
彼等は、1915年にロシア•中国•モンゴルの間で交わされたヒャーグト条約によって、モンゴル国の住民となりました。1940年に行政区画が再編され、モンゴル国最西端にバヤンウルギー県が設立されました。
【参考】
西村幹也(2011)「モンゴルのカザフ人」 日本とモンゴル第46巻第一号(123号)pp25-37
スヘー•バトトルガ(2008)「モンゴルのマイノリティにおける伝統復活とエスニシティ変動--西部地域のカザフとモンゴル系エスニック集団をめぐって」『共生の文化研究(1)』pp112-125
《モンゴルのカザフ人:文責》カザフ情報局ケステ管理人 廣田千恵子
カザフとは…
ここでは、本サイトでご紹介している「カザフ」という人々についてご説明します。
カザフとは、中央アジアに居住するトルコ系民族集団のひとつです。その民族構成は、大きく4つの集団にわけられます。具体的には、トルコ系集団Argyns,Khazars,Qarluqsj,Kipchaks)、トルコ-モンゴル系集団(Kiyat,Dughlat,Naimans,Nogais,Onggirat,Munghut,Jalayir,Alshyn)、プロト-トルコ系集団(Huns,Kankalis,Wusun)、イラン系集団(Sarmatians,Saka,Scythians)の4つから構成されています。
カザフという名称は、15〜16世紀頃から使用されるようになりました。1460年頃にチンギスハーンの長男ジョチの5男の子孫に当たる二人の王族、ジャニベクとケレイがウズベクの支配を離れ、独立政権を立てた際、彼等や彼等の配下のものたちが「カザク」と呼ばれるようになり、これが民族名称としてのカザフの起源とされています。カザフについては、カザフ語では「カザク」、中国語では「ハサク」と呼ばれたりもします。
カザフという名称の意味や起源に関しては、様々に言われています。例えば、13世紀のトルコ-アラビア語辞書には、カザフとは、「独立した」あるいは「自由な人々」を意味すると示されています。一方、カザフという言葉の起源は「放浪する」という意味のトルコ語であるという説も見られます。
【参考】
西村幹也(2011)「モンゴルのカザフ人」日本とモンゴル第46巻第一号(123号)pp25-37
宇山智彦(2005)「カザフ[人]」『中央アジアを知る事典』pp117平凡社
カザフ民族は、大きく4つの集団から構成されています。(詳細は、「カザフとは ★民族」参照) それぞれの集団は、5〜13世紀の間、シベリアから黒海にかけての中央アジア地域において活動し、相互に抗争を繰り広げてきました。
1470年頃、キプチャク•ハン国の祖でありチンギスハーンの長男でもあるジョチの五男シバンの子孫に当たる王族、ジャニベクとケレイの二人によって、カザフ•ハン国が形成されました。カザフ•ハン国は、1500年代前半には現在のカザフスタンの領域のほとんどを支配するようになり、その後カザフ草原の西部、中部、東部がそれぞれ小ジュズ、中ジュズ、大ジュズと呼ばれる3つの部族連合体となりました。
1600年から1700年代初頭にかけては、ジュンガル帝国との抗争が続きます。1726年には対ジュンガル帝国戦で、小ジュズのアブルハイルハーンの元、大勝利を収めるなどしますが、ジュンガルとの長きに渡る抗争はカザフの人々に大打撃を与えました。ジュンガルの攻撃から身を守るために、小ジュズと中ジュズは1730年〜1740年代にかけてロシア帝国に帰属しました。(大ジュズは、後の1865年にロシア帝国に併合されました。)
1755年にはジュンガル帝国が滅亡しますが、この頃からカザフ草原地域一帯はロシア帝国の実質的な支配のもとに置かれるようになりました。こうした状況の中、ロシアによる支配を嫌ったアバクケレイは一族を引き連れ、カザフスタンの土地からアルタイ山脈の南麓(現在の中国•新疆ウイグル自治区)に移動しました。
しかし、1800年代になると、今度は移動した土地にて清朝帝国との衝突が起こりました。結局、1844年にカブリシュとジルクシャのふたりが500世帯ほどを引き連れて、アルタイ山脈の南麓から北麓(現在のモンゴル国•バヤンウルギー県)に移動することになりました。
このように、カザフの人々は周辺民族との度重なる抗争の中、移住を繰り返して中央アジアの各地に点在するようになりました。現在も、カザフの人々は、カザフスタンだけではなく、中国、ウズベキスタン、ロシア、モンゴル、トルクメニスタン、キルギルタン、アフガニスタン、トルコ、イランなどに居住しています。
【参考】
小松久男(1999)「ロシアと中央アジア」竺沙雅章(監)、間野英二(編)『アジアの歴史と文化〈8〉中央アジア史』pp184-188同朋社
西村幹也(2011)「モンゴルのカザフ人」日本とモンゴル第46巻第一号(123号)pp25-37
宇山智彦(2005)「カザフ[人]」『中央アジアを知る事典』pp117平凡社
カザフ人の主な使用言語は、カザフ語です。カザフ語は、中央アジアで用いられる主要なテュルク語のひとつです。中でも、キプチャク語(北西語群)グループに分類されます。近い言語として、キルギス語やカラカルパク語などが挙げられます。
カザフ語の特徴としては、母音調和および接尾語の膠着性、主語+目的語+述語という語順、人称語尾の存在などが挙げられます。
カザフ語の方言には、北東方言、南部方言、西部方言があります。語彙や発音に若干の違いが見られるものの大きな差はないようです。居住している地域によっては、他の言語からの表現や語彙の影響を受けている様子が見られます。
カザフの人々の間では、近代に入るまで文字の使用がほとんど行われませんでした。このため、知識や情報は口頭で伝えられ、その結果口承文芸が高度に発達しました。現在では、カザフ語を表すために、改良キリル文字や改良アラビア文字が用いられています。
【参考】
西村幹也(2011)「モンゴルのカザフ人」日本とモンゴル第46巻第一号(123号)pp25-37
坂井弘紀(2005)「カザフ語」『中央アジアを知る事典』pp117平凡社
カザフ人が信仰している宗教は、イスラム教(スンニ派)です。カザフの人々は、イスラム教を8世紀頃に受容したと言われています。一方で、カザフの人々の様子からは、それほど厳格なイスラム教徒という印象は受けません。それは、シャマニズムや自然崇拝の要素を多く残している事によると考えられます。近年では、モスクの建設やメッカ礼拝といった動きもさかんに見られるようになりました。
こちらの写真は、バヤンウルギー県のウルギー市で撮影したモスクです。
【参考】
西村幹也(2011)「モンゴルのカザフ人」日本とモンゴル第46巻第一号(123号)pp25-37
《カザフとは:文責》カザフ情報局ケステ管理人 廣田千恵子
管理人プロフィール
管理人氏名:
廣田 千恵子 (ヒロタ チエコ: 1988年3月7日生まれ: 神奈川県出身)
こんにちは!カザフ情報局「ケステ」へようこそ!
私は、とある事がきっかけで、浪人中にアジアの文化に興味を持つようになりました。
2007年から大学に入学して、モンゴル語を習い始めます。でも、そもそもモンゴルがどういうところか全く知らずに、なんとなくモンゴルを選択した自分は、モンゴル語を学んでても、ちっとも上達しませんでした。
そこで、2009年の夏から1年間モンゴル国へ語学留学します。留学中は、トゥブ県、ゴビ地域、フブスグル県タイガ、バヤンウルギー県など各地をまわり、たくさんの人達に出会いました。出会った人達の笑顔が温かくて、もっと彼等と話がしたくて、彼等が何を見て何を感じているのかもっと知りたいと思うようになりました。いつの間にか、モンゴルが大好きになっている自分がいたのです。
でも、暖かいのはモンゴルにいるモンゴル人だけではないのです。同じくモンゴルに居住しているカザフ人達もまた、とても温かくて優しい心を持った人達なのです。私はそのことを、カザフ人が作った装飾品を通じて感じました。
留学当初、私はバヤン•ウルギー県で一枚の大きな刺繍布を購入しました。その年の冬、その刺繍布を部屋に飾っていたのですが、なぜか、理由無く、気がつくとその布を眺めてしまっていたのです。まるで何かに惹き付けられているかのように。
一針一針丁寧に縫われた刺繍には、人を惹き付ける力があるように感じられます。私たちを惹き付けているのは、その刺繍をほどこした人々の「想い」ではないでしょうか。
私は、このサイトを通じて、カザフの人々の「想い」を伝えていきたいと思います。彼等の「想い」を伝える為に、彼等が何をみて、何を感じているのか、どんなところで生きて、どんな生活をしているのかも一緒に伝えていきたいと考えています。
”伝える”と言いましても、まだまだ勉強中の身でありまして、伝えられる事は少ないかもしれません。むしろ、ここで発信しながら、自分も知り、考え、学んでいきたいと思っています。一歩いっぽですが、カザフの魅力をお届けできるように、やってみようと思います。どうぞ、よろしくお願いします。
2012.03.23(2014.03.13 一部訂正)
◎経歴
2007 東京外国語大学外国語学部モンゴル語科入学
2009〜2010 モンゴル国立大学留学
2011 東京外国語大学外国語学部モンゴル語科卒業
2011 千葉大学大学院人文社会科学研究科公共研究専攻博士前期課程入学
2012.04〜2014.02 モンゴル国立大学留学およびバヤンウルギー県へのフィールド調査
(財団法人平和中島財団平成24年度日本人奨学生)
2014.04〜 千葉大学大学院博士前期課程復学
専攻は文化人類学。
研究テーマは、「モンゴル国カザフ人の装飾文化とその変容」。
NPO法人北方アジア文化交流センターしゃがぁスタッフ。
しゃがぁについてはこちら
◎発表/論文/活動歴
2011.12「カザフ人の刺繍世界-バヤンウルギーの地で想いを紡ぐ-」しゃがぁvol49号 p16-21
2013.02 「オヤットを考えるーカザフ人の日常生活に見られる行動規範ー」@第24回モンゴル研究会(千葉大学)
2013.12.07【発表】「モンゴル国西部のカザフ人ー鮮やかな装飾に囲まれた日常生活ー」@第27回雲南懇話会
→関連資料 http://www.yunnan-k.jp/yunnan-k/27-20131207/731-20131207-27-03-hirota.html
2013【論文】「カザフの伝統的手芸技法ーモンゴル国バヤン•ウルギー県の事例からー」千葉大学ユーラシア言語文化論集15号
→フルテキストへのアクセス http://mitizane.ll.chiba-u.jp/meta-bin/mt-pdetail.cgi?cd=00117440
2014.04.18~20 【展示】「カザフ刺繍のお店 ケステ屋」春の中央アジア文化祭2014 @西東京: もくれんげ
2014.04.20【発表】「カザフ女性の手仕事ーつくり、つたえる、母心ー」@西東京: もくれんげ
2014.04.27【展示解説】「カザフの刺繍壁掛けトゥス•キーズ展」@北海道立北方民族博物館
2014.04.27【講習】「カザフ刺繍ワークショップ」@北海道立北方民族博物館
はじめに
ようこそ! カザフ情報局ケステに!
ケステとは刺繍を意味するカザフ語です。カザフ人は一針一針、丁寧に、思いを込めて刺繍を、ありとあらゆるものに施します。そんなカザフ人の様々な思いを伝えることが出来たらいいなぁと、カザフ情報局ケステを作りました。
この情報局では主にモンゴル国バヤンウルギー地域のカザフ人、カザフ文化について取り扱っています。
カザフ人はカザフスタン、モンゴル国、中国、ロシアなどに広く散らばっている民族ですが、それぞれの土地に様々に適応した生活を営んでいます。
中でも、モンゴル国にいるカザフ人の多くは、モンゴル人が自分たちと同じ遊牧民であるために、自分たちの独自の遊牧文化を維持、伝承しやすい環境にあったと思われ、言語はもちろん、装飾文化、騎馬文化、イヌワシ狩りなど、多くの伝統文化を守ってきています。
そんな彼らのことを少しでも多くの人に知っていただきたいと思い、NPO法人北方アジア文化交流センターしゃがぁのモンゴル情報局しゃがぁの姉妹情報局として、しゃがぁスタッフによってカザフ情報局ケステは作られました。
まだまだ不勉強で、判らないことも多いのですが、きっと徐々に充実したモノとなっていくと思っています。
どうぞ、これからにご期待ください。
1.5は何が新しくなったのか?
この記事は例として意図的にアーカイブされています。
以前のリリースと同様に、Joomla!は、あらゆる種類のWebサイトのコンテンツを配信するための統一された使いやすいフレームワークを提供します。インターネットの性質の変化やウェブ技術の新興をサポートするにはJoomla!は、その中核となる機能の実質的なリストラが必要であり、私たちはまた現在のユーザインタフェース内の多くの課題を簡素化するためのこの努力を続けてきました。Joomla! 1.5 は多くの新機能を備えています。
Joomla! 1.5では、次のことに気づくでしょう:
- 実質的に元のMamboの基盤をはるかに超える、大幅に改善された使いやすさ、管理性、および拡張性
- アラビア語、ペルシア語、ヘブライ語の言語を国際化、ダブルバイト文字および右から左へのサポートをサポートするためのアクセシビリティの拡張
- ウェブサービスを介した外部アプリケーションの統合の拡張
- アクセシビリティ基準および任意の宛先へのコンテンツ配信をサポートするために強化されたコンテンツの配信、テンプレート、プレゼンテーション能力
- コンポーネントとエクステンション開発者のための持続可能な柔軟なフレームワーク
- 以前のリリースのコンポーネント、テンプレート、モジュール、およびその他のエクステンションとの下位互換性
Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/mominet/kazakh-mongol.com/public_html/components/com_k2/templates/default/user.php on line 260